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2010年2月15日月曜日

「幻の感情による攻撃」が心を苦しめる

子供が、自分の気持ちや考えを素直に話したり、自分の気持ちに正直に行動したりしたときに、親から感情的な反応(感情的に責める、感情的に命令する、感情的に否定する、無視する…)が返ってくることは、子供にはとてもつらいことです。

そこで、子供は、次のような対処で、そのような状況から自分を守ろうとします。


[予防]

(1)相手が感情的にならないように、自分をコントロールする
(2)相手が感情的にならないように、相手をコントロールする


[対処]

(3)自分の気持ちを出さないようにつらさに黙って耐え、相手の命令に従う
(4)自分の気持ちを出さないようにつらさに黙って耐え、相手の命令に従わない
(5)相手の気が済むまで好きに言わせておく(聞き流す)
(6)感情で対抗する


[事後の手当<]

(7)自分の気持ちを、別の誰かに知ってもらい、その気持ちのままに時間を共有してもらう
(8)自分のつらい気持ちに耐えながら、自分の気持ちが納まるのを待つ
※現代社会では、心を回復させることができる(7)の対処は環境的に封じられていることが多く、(8)の対処に陥りやすいところがあります。



予防に失敗したときの対処に関連して

【補足1】

(5)の対処は、子供が自分の感情を親に受けとめられながら身に付けていく対処で、親が感情的になる頻度が高かったり、家庭の中に逃げ場となってくれる大人が居ないとなかなか身に付かないだろうと考えています。

よって、子供は、(3)(4)(6)の対処になりやすいところがあると考えています。


【補足2】

幼稚園くらいの小さい子供は、初めは(6)感情で対抗しようとしますが、親の感情には太刀打ちできません。

小さい子供は、知識量も表現力も理解力も体の大きさも体力もほとんどが親に劣っています。

感情的になって自分を責めている親に、子供が感情をぶつければ、火に油を注ぐことになってしまいます。

子供の対処は、そんな力関係の中で、やがて(3)(4)黙って耐えるという方法に定着していくだろうと考えています。

この「感情で表現し、感情で表現しなくなる」という一連の経過を第一次反抗期と呼んでいるのだと理解しています。

前々回、前回と説明してきたのは、主に(1)(2)の予防的な対処です。


前置きが長くなりましたが、ここからが、今回の本題となります。


これから先の説明は、自分の親に「子供に感情をぶつける傾向」がなかった人には、ピンとこないかもしれません。

でも、身近な人が、良く分からない場面で感情的になってしまったり想定外の反応をしてしまったりすることがあるとき、その人の心を理解する助けになるのではないかと思います。


以前の投稿(気付かないうちに心が受けているもう一つのダメージ)で、同じような状況が繰り返されると、もともと状況との関連で意味を理解されていた言葉が、状況とは無関係の一定の意味を持ってしまうようになる(言葉の形式 に  がついてしまう)ということを説明しました。


それと同じようなことが、この感情による攻撃によっても起こります。

感情による攻撃が、言葉状況特定の意味を持たせてしまうのです。


これが、私の心の苦しさに大きな影響を与えていました。

私は、この言葉や状況に現実とは無関係な感情(過去の親の感情)が影響しているということに気付くのに、とてもとても長い時間を必要としたのでした。


2つほど、私の例を挙げて説明します。

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【例1 : 相手の声が聞こえないとイライラする 】
  • 相手が言っていることが聞こえないと腹が立つ
という状態にしばしば陥りました。

普通に考えれば、「もう一回言ってもらえる?」とか言って聞き直せば済むことなのですが、不機嫌に「なにぃ!?」と反応してしまうのです。

初めは、自分がそんな反応をしていることに気付きませんでしたし、気付いた後も自分自身のことなのに意味が分からずコントロールもできませんでした。


しかし、「相手の感情から自分を守るのは、感情で対抗するか、黙って耐えるのが一番」ということをもとに、自分の現在と過去を振り返ったとき、ようやく自分の中で何が起こっているのかを理解することが出来ました。


「相手の声が聞こえない」ということだけでは、普通は、そんな状況に相手の感情など入り込んでいません。

しかし、子供の頃の経験を振り返ると、母親の言うことが聞こえなかった(或いは、理解できなかった)ときには、
  • また、知らない振りして!
  • ちゃんと、話し聞いてるの!?
  • 言われたとおりにやりなさい!
  • 分かったの!
  • ほんまにこの子は頑固なんやから!
というように感情的に責められることが多かったのです。


つまり、現在においては、本当は起こりもしないその後の相手の感情的な攻撃から自分を守るために、感情な反応で防御していたのです。

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【例2 : 親切にされると腹が立つ】

他人から親切にされたときにも、腹が立つという傾向がありました。

例えば、せっかく、誰かに先を譲ってもらえたとしても、それを断ってしまうのです。

人から優しくしてもらいたくても、そうしてもらえると腹が立って拒絶してしまうので、いつまで経っても人から優しくしてもらうことなどできません。

これは致命的です。

自分の心がどうなっているのか、全く理解できませんでした。

そこで、「感情で反応している」ということから、どのような過去の親の感情から自分を守ろうとしているのかを考えてみました。


そして、理解できました。

それは、私の母親が、私のために良かれと思ってすることを、私が断ると、「お前のためを思ってしているのに、なぜ、それに従わないんだ!!」と従わない自分は責められたのです。

私は、自分がしていることを中断してでも、それに従わざるを得ませんでした。

そして、母は言うのです、「お前は、私が居ないと何も出来ないなぁ~」。

その母親の攻撃から自分を守るために、まず、自分が感情的になって、先に相手に仕掛けることで、自分を曲げてまで相手の思い通りにならなくても良いように、そして、あの言葉を聞かなくても済むように、自分を守っていたということだったのです。

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これから先は、例2を使って説明を続けます。


これらの自分を苦しめる事柄を解決しようとするとき、初めは、頭で「相手は、優しくしてくれているのだから、腹を立てなくてもいいんだ」と理解しようとしました。

確かに、頭ではそのように理解できるのですが、どうしても心が反応してしまうのは止められませんでした。

そして、「腹を立てなくても良いことに、どうして腹を立ててしまうのだ?」と自分を責めて出口が見えない状態になったりもしました。


でも、
  • 「相手が何かを言うと、それに従わないといけない気持ちに追い込まれる」って感じるとしたら、やっぱり嫌な気持ちになるし、腹も立つよなぁ~
というように、自分の感情を理解するステップを1つかませることによって、自分の心で起きていることも理解できるし、出口への道も見えてきました。


あとは、自分の感情に気付いた時に、
  • そうそう、相手の言った通りにしなくても、自分のしたいことを伝えても、普通の人はあんな風に自分を責めて追い詰めたりはしないんだよねぇ~
といった感じに、自分に繰り返し語りかけていると、目の前の現実過去の場面が分離していき、やがて、感情による守りが薄れていきます。簡単に言うと目の前の現実に慣れれば良いのです。


「黙り込んでしまう」、「何も言えなくなってしまう」という状態になって困ってしまう人も、同じように自分の子供の頃を振り返ってみると、そこから、抜け出すためのヒントが見つかると思います。


そして、
  • 「つらい気持ちになったこと」を素直に相手に告げたとき、自分がつらくなったことを「どうしてつらくなるんだ!おまえが悪いんだろ!」と責める人ばかりではなく、「つらくさせてごめんね」と謝ってくれる人も沢山いるのかもしれない
  • 「○○さんとは違って、私は×××のように考えているんですよ」と言っても、「自分と同じように考えろ!」と責める人ばかりではなく、「そうか、君は、そう考えるんだね」と反応してくれる人も沢山いるのかもしれない
と感じ始めると、無理に話そうとしなくても、「自分の考えていること・感じていることを話してみようか」という気持ちが自然に芽生え、それが実際の行動を引き起こすのだと思います。


この投稿が、そんな理解のお役に立てることを願っています。


【ポイント】

自分の何かを変えようとする前にまず、その感情や行動の事情や背景を理解する

また、前回の投稿『「自分の感情」と「他人の感情」の混乱』の最後に記述している【自他の感情を扱うポイント】も参考にして頂けると思います。


次回は、同じことを、少し別の角度から説明したいと思います。

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