見た授業は『道徳』。
授業の内容は、一般的に当たり前とされているようなテーマだったのですが、私の感想は、「あぁ~、小学校一年からこんなようなことを教え込んでいるんだぁ~」というものでした。
授業の内容を細かく書くのは面倒なので、ざっくり書きます。
プールに潜れなかった子供の物語を題材として、物語を少しずつ話し、シーンごとの主人公の気持ちを想像させる形で、授業は展開されました。
- 学校のプールの授業で、潜る練習をしました。
- みんなは頭まで潜ることが出来たのですが、太郎君は潜ることはできません。
- 太郎君は、とても悔しい気持ちになりました。
児童 : 自分だけ出来ないのは恥ずかしかったから。
先生 : そうだね。
児童 : みんなが頭まで潜れたのに、自分だけ潜れなかったから!
先生 : そうだね。じゃぁ~、続きを読んでみよう。
- 太郎君は、お家に帰ってお風呂場で、お母さんと一緒に、一生懸命潜る練習をしました。
児童 : 苦しいけど頑張るぞ。
先生 : そうだね。
児童 : 嬉しかった。
先生 : そうだね、お母さんと一緒だったから、安心な気持ちで練習できただろうね!続きを読むよ。
- 次のプールの授業で、みんなで潜ることをしました。
- いち、に、さん!
- 今度は、太郎君も、みんなと同じように上手に潜ることが出来ました
児童 : 嬉しかった。
先生 : そうだね、苦手なことでも、一生懸命練習したら出来るようになるし、出来るようになったら、嬉しいよね!
もうすぐプールの授業が始まるということで、そこで多くの子供が陥るだろう状況を克服させるために、このテーマが取り上げられたのだろうと思います。
まぁ~、こういう授業をしたい気持ちは分かります。
- 悔しさをバネにして
- 出来るようになったときの嬉しさをエサにして
しかし、「出来ないことを出来るようになりたい」と思うのは、別にわざわざ教育をしなくても、放っておけば、自然に人に生じる心の動きです。
それをあえて強調する教育の意味は、『逃げるという気持ちを封じ込め、逃げ道をふさぐ』ということにとどまります。
物語全体から受ける印象と、先生の誘導から、
- 出来ないことがあるのは良くないこと
- 出来ないことから逃げるのは良くないこと
- みんなができることは、出来るようにならなければならない
この授業の問題点をまとめると、
- 太郎君の気持ちは、『悔しい気持ち』ということを前提にしてしまっている。
- 太郎君の悔しい気持ちにのみ着目したり、他人と同じでないことを問題にしたりして、「自分も潜りたかった」という何とも比較しない太郎君自身の気持ちを言語化していない。
- 自分が抱えた負の感情は、放置するしかないということを、暗に示している
- 更に、「負の感情をバネに、負の感情の原因となった事象を解決する」という、人の心を最も苦しめる『物事への執着』を対処方法として推奨している
『心を回復する機能』の活性化のことを考えると、教材として使う物語の内容を、次のようにしてみればどうかと思います。
学校のプールの授業で、潜る練習をしました。
みんなは頭まで潜ることが出来たのですが、太郎君は潜ることはできません。
太郎君は、お家に帰って、お母さんに今日のプールでの出来事を話しました。
そして、さっきまで「プールなんかしたくない!」と言っていた太郎君は小さな声で、お母さんに言いました。
太郎君は、お家に帰ってお風呂場で、お母さんと一緒に、一生懸命潜る練習をしました。
あれだけ嫌だった頭まで潜る練習が、こんなに楽しくなるなんて、太郎君はとっても不思議でした。
太郎君は、どうして気持ちが変わったのかは分からなかったのですが、「お母さんってすごいな」って思いました。
次の日のプールの授業も、頭まで潜る練習でした。
いち、に、さん!
今度は、太郎君も、みんなと同じように上手に潜ることが出来ました。
太郎君は、とっても嬉しい気持ちになりました。
そして、学校が終わると、家まで一目散に駆けて帰りました。
太郎君は、「ただいま」を言うのも忘れてニッコニッコの笑顔で言いました。
お母さんもニッコニッコ。
そんなお母さんを見て、太郎君は、もっと嬉しくなりました。
みんなは頭まで潜ることが出来たのですが、太郎君は潜ることはできません。
太郎君は、お家に帰って、お母さんに今日のプールでの出来事を話しました。
- 太郎君:「今日はプールで僕だけ潜れなかったの。
だから、もうプールしたくない。」 - お母さん:「そう、どんな気持ちだった?」
- 太郎君:「悲しかった」
- お母さん:「そう、悲しかったんだね。
だから、もう悲しくなりたくないからプールをしたくないんだね。
そうだよね、また、悲しくなると思ったら、プールしたくなくなっちゃうよね。」
- お母さん:「ほんとは、どうしたかったの?」
- 太郎君:「みんなと同じように潜りたかった!」
- お母さん:「そうだね、自分だけ出来なくて悲しかったんだね。
自分も潜りたかったのに、出来なくて悲しかったんだね。
悲しい気持ちだったけど、最後まで頑張ったんだね。
偉かったね。」
お母さんは、そう言いながら、太郎君を抱きしめてあげました。
そして、さっきまで「プールなんかしたくない!」と言っていた太郎君は小さな声で、お母さんに言いました。
- 太郎君:「僕も頭まで潜れるようになりたいなぁ~・・・・」
- お母さん:「そうだね、潜れるようになりたいんだね。
じゃぁ~、お母さんも、協力できることがあったら、手伝ってあげるよ。
あっそうだ、お家のお風呂で、お母さんと一緒に練習しようか?」 - 太郎君:「うん!!」
あれだけ嫌だった頭まで潜る練習が、こんなに楽しくなるなんて、太郎君はとっても不思議でした。
太郎君は、どうして気持ちが変わったのかは分からなかったのですが、「お母さんってすごいな」って思いました。
次の日のプールの授業も、頭まで潜る練習でした。
いち、に、さん!
今度は、太郎君も、みんなと同じように上手に潜ることが出来ました。
太郎君は、とっても嬉しい気持ちになりました。
そして、学校が終わると、家まで一目散に駆けて帰りました。
- 太郎君:「おかーさん!プールで潜れたよぉーーーーっ!!!」
- お母さん:「よかったねーっ!」
そんなお母さんを見て、太郎君は、もっと嬉しくなりました。
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